それは、時計の本来の存在意義である「時を知るための道具」としての大前提までをも拒絶するかのように、常に12時の位置にその針を合掌したまま、時の経過を傍観し続けています。
しかし、ひとたび所有者が時間を知ろうとする時、瞬時に正確な現在時刻を指し示すことが出来るのです。まるで自らの意思を持つかのように、驚くほど忠実で優秀なこの時計は、古くから、人が時間の流れとの関わりの中で葛藤してきた、理想と現実との相違に着目しています。
「シークレット アワーズ」はその名の通り、密かに時を刻む時計として時に追われるような生活を続ける人間に対する時のアンチテーゼなのです。何かに没頭したり、幸福な時間を過ごす時、よく、『時の経つのも忘れる程・・・』という比喩があります。時計を持つ人が時間に追われることなく、より濃密な時を過ごすために、悪しき時の流れの呪縛から解き放たれるよう、動くことを「放棄」した機械式複雑時計なのです。